春分の日を挟んで前後3日間、あわせて7日間を春のお彼岸と呼びます。今年2025年は3月20日の木曜日が春分の日なので、3月17日月曜日が「彼岸入り」、20日木曜日が「中日」、23日土曜日が「彼岸明け」となります。「春の」とついているところからお察しの方もいらっしゃるかと思いますが、秋のお彼岸もあります。秋のお彼岸は秋分の日を挟んで前後3日間、2025年では9月20日土曜日から26日金曜日までがその期間となります。
仏教の行事ではありますが、とくにお悔やみごとというわけではなく、ご先祖さまのことを思い出して感謝するためのものです。

まず「彼岸」とはどういう意味なのかというところですが、これは「あちら側」、つまりご先祖さまや仏さまがいらっしゃる浄土の世界を表します。「西方浄土」ともいわれ、西の果てにあるとされています。これと対になる言葉が「此岸(しがん)」となり、「こちら側」、つまりわたしたちの生きているこの世の世界のことです。

春分の日・秋分の日は太陽が真東から昇って真西に沈む時期であるため、西方浄土、つまり彼岸へのひとすじの道しるべができるという考えから、仏さまやご先祖さまに思いが届きやすくなるタイミングだと考えられたという説があります。長い歴史の中で、たくさんの人がそうしてご先祖さまに思いをつないできたと考えると、心があたたかくなりますね。
なお、お彼岸と同じようにご先祖さまに感謝する行事として、夏の「お盆」がありますが、これはご先祖さまが彼岸から此岸へ里帰りされる日だとされています。ご先祖さまが彼岸にいるままなのが「お彼岸」、里帰りされているのが「お盆」という違いがあります。
そんなお彼岸の時期には、やはりご先祖さまを思って感謝する心を表すために、お仏壇やお墓のお掃除をすることが多いです。きれいにお掃除してからお花を飾って、心静かに日々の感謝を伝えられるといいですね。

とはいえ、お家にお仏壇がなかったり、お墓から離れて暮らしている方も多いことと思います。そんな時は、ぜひお部屋の片隅をきれいにして、好きなお花を飾ってみましょう。あなたが好きなお花でも、ご先祖さまがお好きだったお花でもだいじょうぶです。仏花を飾るのが一般的ではありますが、ご自宅に飾る分には、見ていて優しい気持ちになったり、明るい気持ちになったりするお花のほうがいいでしょう。そのお花が咲いている間、少しだけご先祖さまのことを思い出して、感謝したり近況報告をしたりしてみましょう。

昔から大切にされてきた行事ですから、どうか今を生きる自分なりに楽しんで。あなたの笑顔やほっとした気持ちがご先祖さまへのいちばんの供養になることは間違いありません。心地よい季節のはじまりでもある春のお彼岸、感謝の気持ちにあふれた丁寧な暮らしを始めてみるきっかけにもぴったりのタイミングです。