さっそくですが、「シクラメン」というお花の名前、少し不思議な響きではないでしょうか?
もちろん日本語ではないでしょうし、英語ともちょっと違うような気がします。
調べてみますと、もとになっているのはギリシャ語だそうです。
円や回ることを意味する「キクロス」という単語から来ていて、これは「サイクル」や「サークル」と同じ意味の言葉のようです。なるほど、ちょっと納得です。
そうすると、次に気になってくるのは、「どこが円なんだろう?」というところ。
一見してお花の形も葉っぱの形も、とくに丸いという印象はありません。
理由にはいくつか説があるようですが、まずひとつ目は、茎がきゅるっと丸まっているところからという説。
たしかに山菜のわらびのように、茎の先がゆるい螺旋を描く姿を見ることがあります。
もうひとつの説はなんと土の中。根っこがあんぱんみたいな丸い形をしているそうです。
多くの場合、日本で目にするシクラメンは鉢植えになっているので、植え替えでもしない限り土の中の根っこを目にすることはないでしょう。あえてそこに注目したネーミングセンスに拍手です。
あんぱんみたいと言いましたが、欧米では豚がこの根っこを好んで食べるそうで、「豚のパン」という呼び名があるとか。さらに、それが日本に伝わったときに、まだパンになじみがない時代であったため、最初の日本での呼び名は「豚のまんじゅう」だったそうです。
冬に人の目を惹きつけるお花が、奇しくも冬のコンビニでわたしたちの心を惹きつけてやまないホットフードのような名前で呼ばれていたとは。美しいだけでなく、親しみ深さも感じさせてくれる秀逸な名前です。(筆者は「肉まん」を「豚まん」と呼ぶ関西地方の出身です。)
和名はもうひとつ。「カガリビバナ」という呼び方もあります。
ついにお花の部分に注目してつけられた名前が出てきました。篝火のような花、この名前には大きく頷くことができます。
たくさん集まった小さなキャンドルのようにも見えますし、ひらひらとかわいいお花の形は蝶々のようでもありますね。
冬場に長く咲いてくれるお花なので、リボンで飾ればクリスマスの装飾として、組紐や風呂敷を組み合わせればお正月の和花としても活躍してくれます。
ひとつの茎に一輪の花が咲きますが、葉っぱの枚数だけ茎が出るということなので、選ぶときには葉っぱがわさわさと茂った株を選ぶと、お花がたくさん咲いてくれそうです。
少しうつむいたように咲くお花のようすから、花言葉のひとつとして「内気」が知られています。
華やかな冬の女王さまのようでもあり、ひかえめなレディのようでもある、ふしぎな魅力を持ったお花、シクラメン。あたたかなお部屋の彩りに、お迎えしてみてはいかがでしょうか。